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映画レビュー

浅草キッド〜だから”芸人”はかっこいい〜

シュール系コントが好きです さくらです。
今日はNetflixオリジナル「浅草キッド」のレビューをお届けしたいと思います・

「浅草キッド」
日本公開日:2021/12/17
監督:劇団ひとり
キャスト:大泉洋
柳楽優弥

1988年に刊行されたビートたけしの自伝小説が原作。過去に二度TVドラマ化している。

あらすじ

幻の浅草芸人と呼ばれた深見千三郎の下で修業を始めたタケシ。やがて苦境に立たされる師匠と対照的に、タケシは人気を博してゆく。芸人ビートたけしの誕生秘話。
Netflix公式サイトより)

本作の見どころ ①2人の主演キャスト

柳楽優弥さんがビートたけし?と思ったそこのあなた。静止画を観て柳楽優弥さんではないと思ったあなたも。ぜひ本編を観て驚いて欲しい。仕草から喋り方まで、当時のたけしさんを知らない自分が「あったけしさんだ」と思ってしまうほど見事なビートたけしを演じている。わざとらしさのあるモノマネではなく、本当に動きの全てが人物の「癖」に見えるのがすごい。しばらく観ているともうすっかりたけしさんにしか見えない。そしてそのたけしさんのスマートではなく泥臭くもがきながら怒る姿がなんともかっこいい。いずれあの「ビートたけし」になることがわかっている安心感とは別に、なかなかうまくいかない姿にはもどかしさを感じる。
暴言も、苦しい状況も、色調も相まって全てがどことなくコミカル。深見千三郎氏を演じられているのが大泉洋さんというのもこの「コミカルさ」に一役買っていると言える。とんでもない暴言を平気で吐くのに、やっていることは「コント師」というギャップが既に面白い。しかもタップダンスを踊れるおしゃれな男だ。怖い人にもクールなひとにも振り切れるのに、大泉洋さんの人柄が役に滲んでどうもそこに「暖かさ」と「コミカル」が入っている。まさに「芸人」ならではの「かっこよさ」とその魅力が詰まっているのだ。

本作の見どころ ②演出

監督・脚本を務めたのが劇団ひとりさん!個人的には結構意外でした。「陰日向に咲く」以降作家としても活動をしていた劇団ひとりさん、短編映像もいくつか撮られていたとはいえ、映画監督作品は「青天の霹靂」(2014年)ぶり二作目。(テレビドラマ「べしゃり暮らし」2019年テレビ朝日でも演出を務めている。)驚きとちょっぴり疑念を抱いて見始めたが、ふふっとなるような仕掛けが随所に見られて思わず唸った。脚本も複数の時代を行き来する展開でありながら複雑さや見にくさは感じられず、あっという間に惹きこまれた。また、テンポの作りが上手く、盛り上がるポイントで胸を熱くさせる演出も巧妙で、123分の中に胸が高鳴る映像がたくさん詰め込まれている。
中でも注目は何と言っても”ラストシーン”。ラストシーンの演出はそこまでの全てが詰まった涙の止まらない映像。最後のカットには誰もが思わず「かっこいい!」と”芸人”という生き様に痺れるはず!

おわりに

本作のエンディングテーマは「浅草キッド」ではなく桑田佳祐氏の「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」。(ビートたけしの「浅草キッド」は劇中歌として印象的な使われ方をしている。)このエンディングテーマと同時にエンドロール映像が流れるのだが、この歌詞が、歌詞が沁みて溜まらない気持ちになります!本当にそうだよと叫びたいほど映像にリンクしたサビには笑みがこぼれてしまうほど。楽しく面白くかっこよく三拍子揃った桑田の楽曲がちょうど「浅草芸人」のパッションにジャストフィットしているように感じられた。このエンディングテーマのおかげで、しんみりしっとりした湿っぽい気持ちではなく、どこかバカバカしいものに全力投球して大の字で寝転びたくなるような、晴れやかな気持ちになれる。

どんな方にとっても、熱い気持ちと憧れに心をときめかされる作品としておすすめしたい。