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映画レビュー

最後の決闘裁判 ~騎士道精神クソ喰らえ~

お久しぶりですヒルズです。
本日は10/15から公開されている「最後の決闘裁判」のレビューをおとどけします。

ネタバレなしなのでこれから観る人もご安心を。


「最後の決闘裁判」
日本公開日:2021/10/15
監督:リドリー・スコット
キャスト:ジョディ・カマー
マット・デイモン
アダム・ドライバー

本作は、グラディエーター、ブレードランナーを手掛けた名監督、リドリースコットの最新作であり、処女作「デュエリスト/決闘者」ぶりの決闘がモチーフになった映画だ。

 

あらすじ

14世紀のフランス。騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジュディ・カマー)はカルージュの旧友ル・グリ(アダム・ドライバー)に強姦されたと訴え出る。目撃者もおらず、真実は神のみぞしるということで、決闘の生死で罪人を決めるという決闘裁判が行われることとなった。カルージュとル・グリの決闘であるが、カルージュが敗北すれば、マルグリットも同罪となり、火炙りに処される。果たして強姦の真実、決闘の勝敗は……?

本作の見どころ ①脚本

この物語は史実に基づいている。
実際に行われたフランス最後の「決闘裁判」がモデルになっており、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の脚本家コンビ、ベン・アフレックマットデイモンが本作の脚本を執筆しているのだ。劇中で二人は出演もしており、堂々たる演技をみせてくれた。
この物語は3章構成となっており、騎士カルージュ、旧友ル・グリ、妻マグリットのそれぞれの視点から物語は語られる。カルージュとル・グリが友人となった経緯から始まり、マグリットとの馴れ初め、そして物語の肝となるル・グリによるマグリットへの強姦に繋がるのである。
この3人の視点から語られる物語構成は黒澤明の「羅生門」と同じスタイルをとっており、脚本のマットは羅生門に深く影響されたと語っている。
しかし、これがただの羅生門の模倣品ではない事は鑑賞すれば一目瞭然である。
「羅生門」では登場人物が語る真実が、嘘でねじ曲がったものばかりに対して、「最後の決闘裁判」では、また違ったアプローチの仕方をしている。1つの真実の見方を変えればガラリと印象が大きく変わるのが本作の脚本の上手いところだ。

本作の見どころ ②テーマ

男尊女卑社会の縮図が描かれている本作は、現代に、今だからこそ通じるテーマだ。
マルグリット演じるジョディ・カマーの演技が、このテーマに貢献しているといえるだろう。立場の弱い女性を演じた彼女、カルージュとル・グリよりは台詞が少なくあったが、彼女の眼で訴える表情は強く印象に残った。

本作の見どころ ③決闘シーン

3人の登場人物の背景をしっかりと描き、ラストになだれ込む緊迫の決闘シーン
男のプライドがぶつかり合い、決闘の美学を描いた監督の処女作「デュエリスト」とは全く違うアプローチで、本作の決闘は描かれた。マルグリットの思いも考えず、己の尊厳の為だけに決闘する2人に対し、「どちらも死んでしまえ!」と叫びたくなる。
そんな、それぞれの思いが交差する決闘シーンは、まるで本当に殺し合いを目の前で見ていると錯覚するほど、緊張感、リアリティがあった。近年でここまでリアルなアクションシーンはお目にかかれないだろう。

おわりに

胸糞な展開と、ショッキングなシーンがある本作だが、綿密に練られた時代考証とリドリー・スコットが映し出すロケーションとセットの壮大さ、その緻密さには驚かされる。ここまで唸る社会派な脚本も相まって、素晴らしい作品に出来上がった。是非ともイチ映画ファンは観に行ってほしい作品である。