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映画レビュー

スパイダーマン:スパイダーバース 〜アニメーションの新たなる世界〜

OK!もう一回だけ説明するね!
日常使いできる汎用性の高いお決まりの台詞。むしろ誰かが自然に口にしていると、あっもしかしてと勘ぐってしまうさくらです。

ということで、今日はアニメーション映画「スパイダーマン;スパイダーバース」の個人的レビューをお届けします!

「スパイダーマン;スパイダーバース」
日本公開日:2019/3/8
監督:ボブ・ペルケッティ
ピーター・ラムジー
ロドニー・ロマソン
キャスト:シャメイク・ムーア
ジェイク・ジョンソン
ヘイリー・スタインフェルド

第91回アカデミー賞長編アニメーション部門
第76回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞
ほか多数

あらすじ

スパイダーマンことピーター・パーカーの突然の訃報により、ニューヨーク市民は悲しみに包まれる。13歳のマイルス・モラレスもその一人___そう、彼こそが、ピーターの後を継ぐ”新生スパイダーマン”だ。
ピーターの死は、闇社会に君臨するキングピンが時空を歪めたことでもたらされた。
しかし若きマイルスには彼の更なる野望を阻止するパワーはない。
「彼に変わって”守る”」
と誓ったものの、不安だらけのマイルス。そんな彼の前に突如現れたのは__死んだはずのピーターだった!ただ、彼の様子が少しおかしい。無精ひげ、少し出た下腹、そしてなんとも適当な性格。このやつれた中年ピーターは、キングピンが歪めた時空に吸い込まれ、全く別の次元=ユニバースからマイルスの住む世界に来たのだ。マイルスは真のスパイダーマンになるため、ピーターを師とし、共に戦う決意をする。
「俺たちしかいない__世界を救えるのは」
二人のもとに、別のユニバースから導かれて来たスパイダーマンたちが集結する。
スパイダー・グウェン、スパイダーマン・ノワール、スパイダー・ハム、そしてペニー・パーカーと彼女が操るパワードスーツSP/dr。キングピンの計画を阻止し、全てのユニバースを元に戻す戦いに、スパイダーマン達が挑む__。

スパイダーバース 公式サイトより)

 

 

見どころ ①アニメーションのレベルの高さ

内容について語るよりも先に、まずどうしても押さえておきたいのが「アニメーション」としての新しさ、面白さだ。
「スパイダーマン」に興味がない方でも、アニメーション表現に興味がある方はぜひ押さえていただきたい作品だと断言できる。
記憶に色濃く残っているのは、日本ではこの「スパイダーバース」公開の約二ヶ月後に「プロメア」(製作:TORIGGER)が公開され、話題をかっさらっていったことだ。これだけのハイクオリティアニメーションが近い時期に二つも出たのだからすごいことだ。この二作のどちらにも言えることは、まず「デザイン性の高さ」。そして自由で奇抜な「動きのあるアニメーション」。(おそらくは「スパイダーバース」よりも低予算で作られているであろうことを加味すると、「プロメア」の出来にも目を見張るものがあるが、それはまた別の機会に・・・。)
まず、「デザイン性の高さ」について。
キャラクターデザインが、というだけの話ではない。世界自体がとんでもなくデザイン性が高い。細部まで作り込まれているアメコミらしいPOPな世界。何と言っても面白いのが、ディズニー、ピクサー、イルミネーションを含め、よくある3Dアニメーションの奥行きのある三次元の世界”だけでなく”二次元的表現も混在し、両者が入り乱れながらその両方の力を多分に活かしている。まさに文字通り「次元」を超えた表現。このデザイン性が実にお見事だ。2Dのコミックらしさも3Dのリアリティも、シーンによって非常に丁寧に演出しわけられている。3DCG?それで全部やるなら実写と変わらないじゃん。それはアニメーションではないんじゃない?と思っていたさくらは完全に打ちのめされた。これなら「アニメーション」でやる価値がある。その必要性があり、表現を楽しめる。しかもそれをとんでもなくハイクオリティに作り、グラフィックの平面的デザイン性にまでこだわり尽くした画面。しびれる。
そして「動きのあるアニメーション」。
実写で言うところのカメラワークの動きがすごい。すごいのだ。3Dアニメーションが主流になってから、逆に本来アニメーションにあった動きの自由さは失われたと感じてきた。いわゆる現実にはあり得ない動きのなかに、アニメーターの創造性や生命の表現の面白さがあったと思ってきたので、3Dアニメーションを嫌厭してきた。だが、この「スパイダーマンバース」は3DCGでしか表現できない立体的で複雑な構造の中を、2次元アニメーション的自由さで自由自在にスパイダーマン達が跳ね回る。この表現的面白さは、ぜひ見て実感してもらい。
こうしたアニメーションが、大手アニメーション会社ではなく「コロンビア ピクチャーズ」から出て、そして数々の賞を総ナメするほど高く評価されたことも感慨深い。
クリエイターが表現を楽しんで作ったを感じただけでなく、「アニメーションはまだまだこんなに面白いんだ」とワクワクさせられる作品だ。

 

 

本作の見どころ ②マルチ・ユニバースのスパイディ集結!

現在公開中の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」同様、本作もマルチユニバースから様々なスパイディが登場する。
先駆け的作品だ。
このマルチ・ユニバースのスパイディが大変面白い。アニメーションだからこそコミックのやりたい放題なスパイディがたくさん登場する。中でも人気の「スパイダー・ハム」はなんとブタだ。でもなぜかかっこいい。そして「ペニー・パーカー」。えっ作画違くない?!と正直に思ってしまう彼女はなんと日系女子高生!とっても可愛い。見るまではにわかには信じがたいキャラクターだったが、見てしまうと不思議と彼女もスパイダーマンの一人であることが納得できる。そのぐらい「自由」「なんでもあり」な世界だ。原作コミックスに詳しい方はもちろん、全く知らない人でも十分に楽しむことができるので、ぜひ見ていただきたい。

 

おわりに

ところで、もうNWHを視聴された方は、あのシーンで大きく頷きにっこりされたのではないでしょうか?私はしました。だってここでは主人公だもん!
たくさんのユニバース、たくさんのスパイダーマン、固定概念にとらわれない自由な魅力が詰まっているのがスパイダーマンの面白いところですね。きっとどこかに、こんなスパイダーマンだっているはず。そう、マルチユニバースならね。