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映画レビュー

スパイの妻〜時代に、国に、愛に翻弄される女〜

まだまだ裏起毛が手放せないさくらです!アカデミー賞外国語映画賞受賞「ドライブ・マイ・カー」濱口竜介監督つながりで、濱口竜介氏が脚本を書かれた黒沢清監督「スパイの妻」をレビューします!

「スパイの妻」(2020)
日本公開日:2020/10/16
監督:黒沢 清
キャスト:蒼井優
高橋一生

第77回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞

あらすじ

太平洋戦争開戦前夜の日本。愛する夫とともに何不自由ない暮らしを送っていた聡子。しかし愛する夫 優作 にスパイの嫌疑がかけられる。優作に疑いをかけたのは聡子の幼ななじみの憲兵隊、津森泰治。夫についていけば、必ず破滅する。それでも聡子は___。

 

 

見どころ ①揺れる夫への嫌疑

高橋一生さん演じる優作がなんか信用ならなくて怖いんですよね。そつない形が過ぎるというか、発言の全てが「上っ面」的に見えて、一向に「本音」が見えない。だからすごく怖いんです。フルカラーで今の役者さんが話すのを見ると改めて違和感を覚えるセリフ回しのせいではない。纏う空気に底知れなさがある。絶対悪いやつ!や、信頼できるそぶりをしてる白々しいやつ!でもなく、つかみどころのないグレーな存在。これが素晴らしくサスペンスを引き立てる。聡子の目線から描かれるため、この夫への感情の揺らぎがものすごく生々しい。夫を愛する思いから信じたいと望みつつもどうしてもそこまで無垢ではいられない聡子の姿が実に痛ましい。夫だけでなく、憲兵の津森の言動までが聡子を強く揺さぶる。見ていて最後までハラハラが止まらない、巧妙な疑惑の錯綜がまさに、”お見事”だ。

本作の見どころ ②妻 聡子の一途さ

聡子の鮮明な心の動きが見ていて非常に苦しくなります。蒼井優さんの演じる「純粋で気ままな少女」であった聡子が、夫への愛への嫌疑で脆くなり、そして愛のために強かになっていく心の変化が巧妙です。「か弱く世間知らずなお嬢さん」が、みるみる変化していく姿に引き込まれます。愛のために強くなるなんていうと陳腐ですが、かけているものの重さに思わず胸が苦しくなります。圧巻のラスト、聡子の選んだ道の先にあるものは必見です!

 

おわりに

本作はストーリーもさることながら、退廃的な空気感のある映像美が素敵だなと思いました。どこかぬるっとした生ぬるさを感じる奥行きがあるというか、不思議な魅力のある映像で、一つの「世界」を持っているのがとても魅力的に見えます。
あと、聡子の黄色のワンピースがすごく綺麗に見えるんですよね〜。

非常に美しい作品なので、ぜひ「ドライブ・マイ・カー」のお供に?観てみてください!