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映画レビュー

コンジアム〜恐怖は人間から生まれる〜

最近あったかくなってきたかなと思っていたのですが、今日は寒さが戻ってきましたね。

ということで今日は寒さを際立たせるホラー映画をさくらがレビューしちゃいます!
今日ご紹介するのは最近話題?の韓国ホラー「コンジアム」!

「コンジアム」(2018)
日本公開日:2019/3/23
監督:チョン・ボンシク
キャスト:ウィ・ハジュン
パク・ジヒョン
オ・アヨン
イ・スンウク

韓国ホラー映画歴代2位の興行収益を誇る。

あらすじ

YouTubeで恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」が一般からの参加者を募り、コンジアム精神病院への潜入を計画する。
主宰者ハジュンを隊長とする7人の男女は、いくつものカメラやドローン、電磁検出器といった機材を現地に持ち込み、深夜0時に検索を開始。

100万ページビューを目標に掲げるハジュンの演出も功を奏し、サイトへのアクセス数は順調に伸びていく。
しかし院長室、シャワー室と浴室、実験室、集団治療室を探索するうちに、ハジュンの想定を超えた原因不明の怪奇現象が続発。
やがて悪夢の迷宮と化した病院内を泣き叫んで逃げまどうはめになった隊員たちは、世にもおぞましい402号室の真実に触れることに…。
映画「コンジアム」公式より)

 

 

見どころ ①リアリティ

限りなく全編手持ちカメラはしんどいですって(酔っちゃう)。そう、本作はいわゆるモキュメンタリー(ドキュメンタリーを装ったフィクション作品)の作りになっている。ホラーで有名な作品でいうともちろん「パラノーマルアクティビティ」シリーズなどがそれだが、あれとは異なり「コンジアム」は彼らは実況者であり、生配信で面白映像を届けようとしてくれている。そのため、リアリティのあるテンポ感でありながら彼らが観客を意識してくれるため、退屈せずに楽しめる作りになっている。
本作はこの「リアリティ」がミソだ。調べて初めて知ったが、このコンジアムは実際にCNNが選んだ「世界7大禁断の地」らしい。実在するのか!(気になってランキングを調べたところ、1位はチェルノブイリ。それはそうだ!ちなみに日本は作中で紹介されていた「青木ヶ原樹海」の他に「軍艦島」も入っていた。今となっては観光地ですやん。そこは東尋坊じゃなくて?)
そして俳優も役名がそのままだ。リアルな演技の裏には、本人が役を演じずありのままを晒していたのかもしれないと納得した。
とにかくこの「リアリティ」が臨場感のある、「怖いお話」ではなくまるで今まさにどこかで行われている「生配信」という恐怖を生み出している。
ホラーの作りも上手い。ありがちなホラー展開がゆるゆる続き、なあ〜んだという中盤のネタバラシ。じわじわ煽る展開はそんなに怖くはないかな〜と安心したところに、急アクセルを踏み込む超壮絶な展開!用意してなかっただけに驚く上にシンプルに恐怖を煽るデザインが絶妙だ。リアリティを決して損ねない範囲で不安をはるかに通り越し「怖!」と震え上がるような人間の姿。「コンジアム」と調べて出てきた画像で改めて確認してもやっぱり怖い。
そうして気づくと手持ちカメラのブレのことなど忘れてすっかり作品に入り込み、まさに「配信」を見る視聴者の一人になっていたのです__。巧妙な作りになっている見事なホラー映画だ。

本作の見どころ ②恐怖を通じた社会的メッセージ

冒頭でその精神病棟が心霊スポットになった理由が明かされる。そこでもうこの作品はただのお気楽ホラーではないと感じた。今さっきそれが実在の場所だと知り、さらに考え込んでしまう。
人間の「恐怖」を生み出す「人間」のおぞましさ、それは決して架空の「物語」の出来事ではなく、”現実”の社会を生きる我々が直面する地続きのリアルで起こっているホラーなのだと、モキュメンタリーという撮影方法が物語っている。ホラー映画というエンタメの枠を通じ、巧妙に一歩社会問題に踏み込んでいるのだ。それは単に「迷惑系Youtuber」の問題ではなく、「恐怖」の深淵にいる人間存在のおぞましさだ。それを冒頭で提唱されてしまうのが凄い。
へらへらホラー映画を再生した自分が思わず襟を正すこととなった。なにぶん他人事ではないのだ。韓国映画?韓国に限ったことではない。本国でもたくさん聞いた話であり、最近までよっぽど差別的な法律があったのは日本の方だ。
「恐怖」の裏にある差別意識やそれが生む人間の軽率さ日頃エンタメとして消費してきたホラーに、本当はどれだけの深刻な人間のリアルがあったか、考えたことがなかったと気付かされた。恥ずかしい話だが、より恥ずかしいYoutuberの姿にちょっと救われる。そしてその配信を楽しむ人々も、そんな恥ずかしい人々なわけで、その点軽率にこの映画を観だした我々ももちろんそういうことだ。う〜んお見事。
生きている人間が一番怖いよね〜というありがちなお話でもない。霊が全て「生きていた」確かな人間存在で、霊になる原因があり、それを起こしたのも人間で、それを恐れるのも人間という人間の深淵を、今現在の我々の現実につなげる作品だと感じた。

 

おわりに

「コンジアム」はNetflixで配信中!ちなみに先ほどちらっと述べたが、「コンジアム」と調べるとすぐにネタバレ画像が出てきてしまうため、検索はお控えすることをおすすめします。