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映画レビュー

「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」〜007よ永遠なれ〜②後編

こんばんはヒルズです。
今日は昨日に引き続き10/1に公開された「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の激アツレビュー回、後編です。(前編はこちら

前回に引き続きネタバレなしなのでこれから観る人もご安心を。


「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
日本公開日:2021/10/1
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
キャスト:ダニエル・クレイグ
ラミ・マレック
レア・セドゥ

 

本作の見どころ ③情景とテーマ

物語の始め、ゆったりとした風景が長く続くのかと思いきや、怒涛のアクションの連続に驚かされる。イタリア・マテーラの石畳を颯爽と駆けるアストンマーチンに、埃まみれになりながら戦うボンドの姿は男臭くカッコいい。
(ここで、アストンマーチンがあまりにもカッコよくて値段を調べたら、心臓が飛び出るほど驚いたのは翌日のことである)
過去のヴェスパーへの固執と決別し、将来を見ようとするボンドが序盤から伺える。
マドレーヌは云う、「スパイのあなたはいつも後ろを振り返る」。
このことが本作ではボンドの心情の核となるのだ。過去ではなく今、そして未来を見ろと。
そのテーマがあるからこそ、ラストの驚愕の展開には涙を禁じえなかった。

本作の見どころ ④キャラクターの魅力

前作から引き続きボンドガールのレア・セドゥ演じるマドレーヌ。彼女との恋模様は複雑なようにみえるが、それはお互いが抱える問題によってすれ違いから生じるものである事は本作を鑑賞すれば十分に理解できる。二人の愛が如何にして深いものであるのか、007に付き物のラブロマンスの中でも本作は特に舌を巻く。

本作では魅力的なキャラクターも多い。おなじみのレギュラーメンバー、開発担当のQことベン・ウィショーはとてもチャーミングで、オタク臭いところがシリーズ通して大好きなキャラクターの一人だ。
ゲストとして出てきた新人CIAのパロマと、ボンド後任の00エージェントのノーミも非常に魅了的なキャラとなっている。特に背中が大きく開いたドレスを美しく着こなしたパロマが、テクニカルな体術を繰り出していたことに驚いた。二人の物語の立ち位置がうまく、あくまでもゲストはゲスト、出しゃばりすぎず、ボンドに華を持たせる形で物語から潔く退場するのは好感がもてた。しかし、演出的には女性を活躍させることは成功しているかもしれないが、少し中途半端な印象を受けたのも事実だった。

本作の見どころ ⑤撮影と音楽

本作であまり話題にされていないが、カメラワークのセンスも良い。スウェーデン出身の撮影監督リヌス・サンドグレン。彼は「ラ・ラ・ランド」でアカデミー撮影賞をとっただけあり、引きの画でダイナミックな映像を分かりやすく撮るのだ。それは、今作のカーアクションシーンでも遺憾なく発揮されている。そしてお得意の長回しワンカットも、終盤の銃撃戦で息もつかせぬアクションシーンとして魅せてくれた。

音楽のハンス・ジマーが手掛ける曲は流石としかいえない。重低音を効かせた楽曲が近年では特徴的であり、007のメインテーマのアレンジは素晴らしい。それぞれの曲が物語を際立たせ盛り上げる。

終わりに

007シリーズお約束の、秘密兵器にガジェットの数々は健在。ビシッとキメたスーツを着こなし、各国を行き渡る冒険にアクション、そしてラブロマンスは勿論のこと、スパイ映画の体を崩さずに160分の長丁場で完結作として見事に描き切った。
ダニエル・クレイグ版は一作完結型というよりは、全作の流れがあり、シリーズを通して観ないとストーリーに置いて行かれてしまう懸念点があるので、是非ともシリーズを予習してから鑑賞するのを強く進める。
是非とも、このスケール感を劇場で体感してほしい一作である事は間違いない。