モービウス〜ダークヒーローの誕生〜
長らくご無沙汰していました。ヒルズです。
ようやく仕事が落ち着いたので、念願の映画を劇場で観に行くことが出来ました。
さて、その映画はというと……本日は「モービウス」のレビューをしていきます。
え? ザ・バットマンは観たかって? もちろん、最高によかったです。
「モービウス」(2022) 日本公開日:2022/4/1 監督:ダニエル・エスピノーサ キャスト:ジャレッド・レト マイケル・キートン マット・スミス アドリア・アルホナ |
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あらすじ
幼い頃から血液の難病に苦しむ天才医師マイケル・モービウス(ジャレット・レト)。彼は同じ病気で苦しむ患者、そして病に犯された親友のマイロ(マット・スミス)を救うため違法な治療法に手を出してしまう。それは吸血コウモリから作り出す血清の制作。モービウスは自身を人体実験の被験者とし、体内に血清を投与する。その結果、不自由だった身体が嘘のように回復し、常人以上の超人的な身体能力、コウモリの様な飛行能力や、周囲の状況を察知するレーダー能力を身につけたのだが、その代償として、血液を欲するようになり、理性のコントロールができなくなってしまう。そんな時、ニューヨークでは血液を抜かれた死体、殺人事件が頻発するのであった。
はじめに
今作「モービウス」の公開は元々2020年7月10日全米公開予定であったが、7月31日へ延期。そして新型コロナウイルスの影響を受け2021年3月19日へ日程が繰り下がり、社会情勢を鑑みて2021年10月8日→2022年1月21日→28日ようやく2022年4月1日公開したのだった。数えれば通算6回の延期、初めの公開日から2年の歳月が経ってしまうという何とも不遇な作品なのだ。あまりに延期するもので、お蔵入りになるのではと当時は不安がっていた。
初めの予告編が出たのも2020年1月の頃、予告編の最後にマイケル・キートンが登場しファンの間で歓喜と考察で盛り上がったのが懐かしい。「スパイダーマン ホームカミング」のヴィランのヴァルチャーを務めた役者が出演するとあっては驚きを隠せなかった。その答えが2年越しでようやく判明するのだ、観ないわけにはいかないだろう。
見どころ ①モービウスとスパイダーマン
「ソニー・スパイダーマン・ユニバース」通称SSU企画の第三作目に当たる。
(一作目はヴェノム、二作目はヴェノム2)
SSUとは、原作コミックのスパイダーマンに登場するヴィラン等のキャラクターを主役に、単独映画の世界観を共有する映画企画である。要はアイアンマンやキャプテン・アメリカの世界観を共有するMCUや、スーパーマン、バットマンの世界観を共有するDCUと同じだ。それのスパイダーマン版といったところ。
モービウスはスパイダーマンに出てくるヴィランであり、時にはスパイダーマンと共闘してダークヒーローの側面もあるキャラクター。面白いのが、吸血鬼的キャラクターであるので、原作ではヴァンパイアハンターのブレイドと共闘する展開も見られる。
モービウスというキャラクターはスパイダーマンに登場するヴィランの共通した特性がある。
ヴィランの特性とは、スパイダーマン最大のテーマ「大いなる力には、大いなる責任が伴う」この責任を放棄し、力に溺れたヴィランの事を指すのだ。スパイダーマンが悪の道に堕ちていたかもしれないもしもの姿、それがスパイダーマンのヴィランに共通している点だ。
本作の見どころ ②ダークヒーローの姿
さて、本作モービウスはダークヒーローといった側面が強いキャラクターになっている。
病気で苦しむ人々を助けるために作った血清が、血液を欲する様になる怪物、吸血鬼と化してしまう薬だったのだ。命を救う医師が、命を奪う化け物になってしまうのは何とも皮肉なものである。
人々を救いたい気持ち、生きながらえるために血を欲する欲望に駆られるモービウスの葛藤が描かれる。
この事がモービウス個人の問題として完結するかと思いきや、分かりやすくモービウスと敵対するヴィランが明確に登場する。このヴィランの存在こそスパイダーマン的テーマ「大いなる力には、大いなる責任が伴う」モービウスのなっていたかもしれない姿、欲望に堕ちたヴィランを継承しているのだ。
本作の見どころ ③コウモリアクション
コウモリ的飛行アクション、スタイリッシュなレーダー能力、そしてモービウスが手に入れた超人的能力。特に超高速移動するアクションは、マトリックス的なスローモーションとVFXを取り入れた動きの残像が可視化された映像は見応えがある。
序盤の船上でのアクションシーンは、モンスターパニックものでよくある、謎の怪物が暗闇から襲撃してくるといったリドリースコットのエイリアンを彷彿とさせるシーンにはドキドキした。こういった演出は2017年公開したSFホラー映画「ライフ」を監督したダニエル・エスピノーサらしいと言える。
おわりに
ダークヒーロー誕生ものとして手堅い出来であるのが良いところでもあるし、悪いところでもあるのが正直な感想だ。あまり大きな声で言えないが、SSU作品や、失敗したアメコミヒーロー映画、某ライアン・レイノルズ主演だった緑ヒーローでも見受けられる、規模が大きい割に物語が身内キャラのみで完結してしまっているといった中途半端な出来の物語に当てはまってほしくないものである。
予告で話題になっていたマイケル・キートンの登場、果たしてスパイダーマンのヴァルチャーと同一人物なのか。他にどういったサプライズがあるのかは、劇場でその目で確かめにいってもらいたい。